新型インフルエンザは、2009年4月に明らかとなり、世界中に瞬く間に拡大した。日本での流行は2009年関西方面から始まり、6月中旬から日本各地で発生した。10~11月にピークを迎え、2010年に入ると鎮静化した。2010年1月末における国内の推計受診患者数は2059万人となり、過去10年間における最大の流行になった。
1)合併症・死亡例について
新型インフルエンザの症状は、季節性インフルエンザと同様であり、肺炎を起こすと重症化しやすい傾向にあった。小児においては、急速に呼吸不全を発症するケースが多く経験されたが、適切な処置により回復するケースが多かった。一方、中高年での発症は少なかったが、発症した場合の致死率は小児をはるかに上回った。日本の新型インフルエンザによる死亡率は、世界とくらべて最少であった。
2)感染経路・感染期間について
季節性インフルエンザと同様に飛沫感染が中心であると考えられた。学校の教室における感染は、隣同士などの感染が多く、一気に教室中に広がることはない。感染期間も季節性と同様であり、熱の出る少し前から始まり、高熱時にピーク、解熱とともに感染力は低下した。解熱後2日間は、感染させる可能性があると考えられた。
3)休校・休園について
感染拡大阻止のために、学級閉鎖や学校閉鎖が行われた。その結果、感染拡大予防には、およそ7日間の学級閉鎖が必要と考えられた。しかし、抗インフルエンザ薬の早期使用により、速やかに回復するケースも多くなり、登校停止期間については様々な意見がみられる。解熱後2日、かつ発症5日間は休むことが望ましいと考えられる。
4)治療とワクチンについて
日本では、早期に抗インフルエンザ薬を使用されるケースが多いが、世界の多くの国では大多数が自然経過により回復している。WHO(世界保健機関)は、合併症発症のリスクの高い基礎疾患のある患者に対して、早期治療が重要であると提言している。
国産の新型インフルエンザワクチンは鶏卵培養法によるHAワクチンであり、季節性インフルエンザと同様である。副反応についても大きな問題はないと考えられる。
今シーズンのワクチンは、
A/California/7/2009(H1N1)virus(新型)
A/Victoria/210/2009(H3N2)virus(香港型)
B/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)の3ウイルスが混合されたワクチンである。
5)インフルエンザに対する備え
昨年の新型インフルエンザでは、日本における死亡率、妊婦の重症化率などは海外に比べ世界最低であった。しかし、新型であれ季節性であれ、重症化の可能性を正しく予想することは難しい。多くの人が感染し、少なからぬ合併症・重症化、そして死亡例が発生するインフルエンザに対して、私たちは常に警戒して準備を怠らないようにすべきである。
【参考文献】
メディカル朝日 2011年1月号 より、抜粋。
岡部信彦 著(国立感染症研究所 感染症情報センター長)













